2018年4月19日

フレンチはイタリア料理の影響を受けている?フランス料理の歴史を変えた貴婦人…カテリーナ・デ・メディチ

ユネスコ無形文化遺産「フランス料理」の影にはイタ飯あり?

優雅でなんとなく敷居が高そうなフランス料理

2010年には、ユネスコの無形文化遺産にも認定されました。しかし私たちが「フランス料理」と聞いて思い浮かべるイメージが確立したのは、じつに20世紀に入ってからと言われています。

中世の時代から今日にいたるまで、何世紀にもわたって変遷を重ねてきた「フランス料理」には、どんな逸話が残されているのでしょうか。

各国の影響を受けて洗練されてきたフランス料理の中世

現在では、食文化の優雅の極みとされているフランス料理も、中世においては非常にシンプルである意味とても原始的なものでした。

宮廷で王や貴族たちが集う晩餐会に運ばれてくる料理は、ぶつ切りの肉、チーズ、パートブリゼ、果物の砂糖漬などとともに、蜂蜜やスパイスが入ったワインが主流でした。

王様といえども、こうした料理を親指と人差し指、そして中指を使って口に運んでいたのです。

当時、富裕層の晩餐会に「富の象徴」としてふんだんに使われていたのがスパイスです。とくに、フランスの宮廷ではマスタードが大量に消費されていたという記録が残ります。

現在、「タイユヴァン」という名のフレンチレストランが各地にありますが、タイユヴァンとは中世のフランスにおける著名なシェフ「ギョーム・ティレル」の通り名でした。中世フランスのカリスマシェフといったところでしょうか。

地続きのヨーロッパは、文化もあらゆる政治的な要素を受けて多文化と交わり、変容してきました。もちろん、食文化もこの例に漏れません。

イタリアからお嫁入りしたメディチ家のカテリーナによってもたらされた大変革

1533年、フィレンツェのメディチ家の直系カテリーナ・デ・メディチが、フランス王家の次男アンリ王子と結婚します。

アンリは後にアンリ二世の名でフランス王となり、カテリーナもフランス風にカトリーヌ・ド・メディシスと呼ばれる王妃となります。この二人の夫婦仲はそれこそ映画にもなるほど波瀾万丈でしたが、カテリーナがフランスに当時咲き誇っていたイタリアの文化を持ち込んだことに注目しましょう。

ローマ法王を二人も輩出したメディチ家は、まさにイタリアのルネサンスの中心に存在していました。その直系に生まれたカテリーナ、容貌に少々難はありといえども教養ある女性であり、さらに美食家でした。

フランスに輿入れするにあたり、料理人はおろか野菜を栽培する農夫たちまで帯同したと言います。

カテリーナなしではフランス料理はありえなかった

カテリーナがフランスに持ち込んだものをざっとあげてみると、ジェラートフォークアーティチョークオムレツマカロンなどなど。

食文化以外にも、香水や下着といった貴婦人のたしなみも、すべてはイタリアの一貴婦人からフランスにもたらされたのです。

とはいえ、カテリーナの試みが全て成功したわけではありません。

トスカーナの伝統料理「チブレオ」は、甘いタマネギや卵、鶏肉、豆、レモンを使用した料理で、フィレンツェでは庶民から貴族にまで愛されていました。

カテリーナは自分の大好物である「チブレオ」をフランスにも広めようとしましたが、これは失敗。フランスにはすでに、「鴨のオレンジ煮込み」と「オニオンスープ」が存在していて、さしものトスカーナ料理も歯が立たなかったのだとか。

またカテリーナは、食の調達のために自ら市場にくりだすことも珍しくなかったといわれています。外出の際には、王家のシンボルである青いサッシュを身につけていました。

カテリーナの熱心な食への探求は、やがてフランスの高名な料理学校「コルドンブルー(青いサッシュ)」の設立につながるのです。

近代のフランス料理

その後、17世紀も半ばになるとヴェルサイユ宮殿で繰り広げられる晩餐会は、ヨーロッパの宮廷の規範と仰がれるほど洗練されていきます。

しかしフランス革命によって貴族たちが海外に亡命するなか、宮廷で活躍したコックたちは職を失い、「フランス料理店」が誕生することになります。

19世紀には、フランスの料理はまだ地方色が濃かったようです。

フランス料理」というカテゴリーの成立には、アントナン・カレームやオーギュスト・エスコフィエといった食の研究家たちの貢献があったのです。

また、2010年にフランス料理がユネスコの無形文化遺産に認定されるについては、ポール・ボキューズ、アラン・デュカス、ピエール・トロワグロ、マーク・ヴェラ、ミッシェル・ゲラールといったフランス料理界のスターたちの猛烈な運動があり、当時のサルコジ大統領がこれに応えて支持したという経緯があります。

いかにもフランスらしいシェフたちの強い自負心に支えられて、優雅なフランス料理は発展を続けているのです。

フランスvsイタリア 「隣国同士は仲が悪い」は食卓にも

フランスとイタリアは、歴史においても常に張り合ってきた仲。

料理の世界でも、それは変わらないどころかさらに熾烈なライバル意識がメラメラしています。

フランス料理は、原材料や味つけから非常に洗練されたものを使用することに特徴があり、逆にイタリア料理は素朴な材料本来の味を生かしたシンプルな味つけが特徴。

ワインにもそれぞれの国の特徴が顕著で、フランスのワインは百花繚乱の香気で有名ならば、イタリアのワインはどっしりとした重厚感で人気があります。

コース料理で大きな違いは、フランス料理は前菜のあとにお肉や魚の料理を食べるのに対し、イタリアはそのあいだに「プリモピアット」とよばれるパスタやお米の料理が入ってくることでしょうか。

とはいえ、相似性はあちこちに残り、フランスの朝がカフェオーレとクロワッサンならば、イタリアのそれはカップチーノとコルネットといった具合。

最後に

洗練されたフランス料理の成立には、地続きのヨーロッパながらのさまざまな要素があってこそ。

政争を繰り広げたヨーロッパの宮廷でも、おいしいものを追求する熱意は廃れなかったわけで、各国で切磋琢磨して発展してきた食はまさに歴史と文化の担い手といえるでしょう。

(文章・ライティング:cucciola)

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